死刑について②【反対派の意見】

安楽死・死刑

 死刑に限らず、有罪判決には冤罪の可能性がある。懲役と比べた場合、死刑の場合には絶対的に取り返しがつかない。仮に、冤罪を防ぐために「動画で明確に確認することができる場合」にのみ原則死刑とする、と定めても、動画を加工することなどいくらでもできる1

 それでも死刑賛成派は「冤罪をなくすことができないのは確かにその通りだ。だが無実で死刑になる人がごく稀に生じるとしても、それでもなお死刑制度を維持する方が比較考量してメリットが大きい」と主張するだろうが、それは社会のために個人が犠牲にされることは仕方がないという全体主義の考えに他ならない。それでは、社会の駒にするために出産を肯定すべきという、反出生主義に対する幼稚な反論と同じ考え方になってしまう。

 さらに死刑賛成派は「死刑にせずに無期懲役や終身刑とした場合は税金の無駄な支出になる」と主張する。確かに現状では殺人犯を税金で養うという構図になっているが、それはその仕組みに問題があるのであって、現状の仕組みがそうであるから「だから死刑にすべきだ」というのは飛躍し過ぎである。

 例えば、刑務所内で食料を自給自足にするとか、太陽光発電や人力発電などで電力を賄うとか、刑務作業で誰が買うかも分からない工芸品を作らせるのでなく、企業から正式に請け負った仕事をさせて正当な賃金を支払い、それを運営費や遺族への補償金に充てるとか、仕組みを変えることをまず考えるべきである。これらの方法の方が、単に死刑にして終わりにするよりも国にも遺族にもメリットがあることも考えられる。

  1.  素人がネットに投稿した、動画生成AI作成の動画でさえなかなか滑らかに動く。 ↩︎

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