国がこれまでに行ってきた「少子化対策」が、実際のところは少子化推進政策であったということは、ネットニュースなどでも頻繁に指摘されるようになったから、多くの人が気付いていることだろう。
男女が出会って結婚しなければ、子供は生まれない1。だから、少子化対策と言った場合に、まともな思考力のある人間が真っ先に思い付くのは「独身の男女を結婚させること」である2。それなのに、国は「既に子供が生まれた人」や「既に結婚した人」を優遇することしかしてこなかった3。そしてその優遇のために犠牲にされ続けたのが独身者である。
私は元裁判所書記官であるが、既婚者の異動希望はすぐに叶えられ、産休・育休・時短勤務といった優遇がされる一方で、私の異動希望は無視され続け、ひたすら地方回りと過重労働4を強制され続けた。結婚して自分の人生を生きるためには私は退職するしかなく、婚姻適齢期ギリギリで退職したが、すぐに潰瘍性大腸炎と直腸の悪性腫瘍にり患し、直腸を切除して地獄の人生を送ることとなった。排便障害により婚活パーティに参加することも恐怖であり、外食を極力控える生活をしている。もし国が、少子化を進めるために「少子化対策」を行っていたのであれば、まさに狙い通りに子供を作れない国民を一人作ることに成功したわけである5。
- 別に結婚という形に拘る必要はないが、そこは論点とはならない。 ↩︎
- 少子化の原因は未婚化や晩婚化だという主張は、ネットニュースでもよく見かける。「子供を作ったはいいが、育児や生活ができるようにするためにサポートが必要だ」という思考は次のステップのものである。 ↩︎
- 児童手当などの支援も必要なことであるのは間違いない。だが、「既に子供が生まれた人」ばかりを優遇することの不適切さを上手く例えた言葉を見かけたので引用する。
「少子化対策において言うと、飛行機に乗れなくて困っているのに、機内サービスばかり充実しても……というような感じです。」
引用元記事
止まらない超少子化…子どもを産みうる女性激減、結婚したくてもできない人が多いという「厳しすぎる現実」
現代新書編集部、講談社ホームページ, 2023.04.13
https://gendai.media/articles/-/108890?page=4 ↩︎ - 月100時間ほどの残業をしていた年もあった。 ↩︎
- 以上のように、独身者の人生が既婚者のために犠牲にされ、その結果結婚したくてもできない人がいる、というのは公務員に限った話ではなく、言うまでもなく民間でも同じことが言える。
最近になってようやく、東京都がマッチングサービスを始めるなどしたが、そもそもこのような婚活支援は国がすべきことであるし、始めるのが遅すぎるのである。もしかしたら政府は反出生主義思想をもっており、その思想に基づいてこれまでの少子化推進政策を行ってきたのであれば、政府の見事な政策に脱帽するばかりである。 ↩︎