前回は、裁判所が宿直について男性差別を行ってきた実態を解説した。
今回は、裁判所が独身者に対して行ってきた差別を詳しく述べようと思う。
私は、裁判所職員総合研修所での研修を終えた後、A県A市に、新任書記官として戻ってきた。このA市で半年ほど書記官として働いた頃であっただろうか(新卒採用からは3年半ということになる)、私は今後の人生を考えるに当たり、地元のB県B市に戻りたいと思うようになった。A市で出会った人間は、上司も先輩も同期も無駄に好戦的な人間が多い上、付き合いたい、結婚したいと思えるような人も見かけなかったし、大学で地元を離れて7年半が経ち、単なるノスタルジーというだけでなく、人を取っても、自然を取っても、食べ物を取っても、私の地元がかなり恵まれた地域であったことを認識するようになったからだ。なお、A市から地元のB市まで、新幹線で5時間以上掛かるので、帰省の際は飛行機を使うことが多かった。
そこで私は地元B市への異動希望を出したが、次の4月にA市からC県(地元B県の近県であり、B県と同じ高等裁判所の管轄内)への異動願いが叶えられたのは、C県の人と結婚した職員だった。この人をXさんと呼ぶことにする。
Xさんと交換する形でC県からA県に異動してきた人も、結婚を理由とするものだった。つまり、A県側、C県側の双方において、「結婚した人」が優先的に異動希望を叶えられていたわけである。
当時は私もまだ書記官に任官してA県に戻ってきて1年だったし、「結婚した人が優先されるのは仕方ないか」くらいに思っていたお人好しだった。
私はその後も1年半そのまま働き続けた。つまり、書記官になって2年である。すると、私に異動の辞令が出た。行き先は、A県で一番の僻地で、地元B市からさらに遠くなるD市である。D市は、その地理の不便さもさることながら、少人数で裁判所のほとんどの業務を行わなければならない大変さから、A県の裁判所職員が一番行きたくない支部であった。
私は上司に、「組織人として当然のことです」と言い、一切の難色を示さなかった。自分の権利だけを主張して義務を果たさないのは、組織人として、社会人として、失格だからである。地元のB県に異動させてもらうためには、それくらいすべきだと考えていた。上司と裁判官は、私の潔い言葉に感動していた。
D市では2年間働いた。特に1年目の仕事は今振り返っても過重の負担で、毎日8時~9時まで残業していたが、良い先輩や唯一仲の良い同期が一緒だったおかげで、なんとか乗り切ることができた。
地理的には、映画を観たりショッピングモールで買い物をしたりするためには車で片道2時間の山越えをしなければならなかったが、まぁ2年間の辛抱と思って耐えていた。
2年間が経つ頃、次の異動で希望が叶えられなければ、私は辞職しようと決めていた。Xさんと違って、異動前に私は十分義務を果たしたし、これ以上耐え忍ぶことのみに人生を使うことは無駄だと思っていた。私は早く結婚したかった。
私の次の異動先は、私の地元のB県を管轄する高等裁判所の区域内であるE県E市であった。ただし、本土から離れた島だった。地元のB県に帰るには、現実的に飛行機しか手段がなかった。
私は思い悩んだ。それと同時に、裁判所に対する怒りが湧いてきた。Xさんは結婚というプライベートの事情のみで、特段組織に貢献せずにすぐに異動希望を叶えてもらったのに、なぜ組織に貢献してちゃんと義務を果たした私がこんな仕打ちを受けなければならないのだろう。私は普段自分のことについて誰にも相談しないが、この時ばかりは母に相談した。母は、行ってみてだめだったら辞めればいい、といい、私もそのとおりだなと思ったので、E市に行くことにした。自動車を輸送するだけで軽く10万円を超えた。
E市では、1年目と3年目はだいたい定時に帰ることができた。だが2年目が地獄だった。
2年目は、前回の記事で書いたとおり、通常業務と当直(日直と宿直)を合わせて100時間くらい残業させられていた。
地獄の2年目の終わりにも異動がないことを告げられ、私は尋常ではない額の重みを感じるようになったことから、精神科に行く旨を上司に告げた。上司の言葉は、「インフルエンザじゃないの?」だった。
3年目の初めに、私は次で異動がなければ辞職する旨を上司に告げた。
3年目の終わりに、異動がないことが告げられたので、私は辞職した。
私は自分の人生を生きるために裁判所を辞めたが、すぐに潰瘍性大腸炎と直腸神経内分泌腫瘍を発症し、直腸を切除して排便障害者となり、婚活どころか飲みにも行けなくなり、今もなお地獄の人生を送っている。立証が困難なので裁判所(国)に対して裁判を起こすことはしていないが、裁判所での地獄の日々が原因であることは間違いないと個人的には確信している。
※Xさんや上司について責めているわけではありません。裁判所の人事のあり方、管理職への指導不足を問題視しています。