最近、裁判所が男性にのみ宿直を強い、女性には休日の日直しかさせてこなかったことが一般の人にようやく明らかとなり、YouTube動画でも解説動画が上げられて、裁判所を非難する多くのコメントが寄せられるなど、非常に話題になっている。
そこで、裁判所が男女差別を行うだけでなく、独身者に対する差別を継続的に行うなど、いかに非道な組織であるかを、私の裁判所書記官経験を元にお話ししようと思う。
まずは、今話題になっている当直制度からお話ししよう。
当直には、日直と宿直がある。日直は、土日祝日の昼に令状発付や勾留質問の補助業務を行うものであり、宿直は平日や土日祝日を問わず、つまり1年を通して毎日、令状発付の補助業務を行うものである。
そして、最近知られるようになったとおり、日直は男女問わず行うが、宿直は男性のみが行う。日直は週に基本2回しかないが、宿直は週に7回ある。考えるまでもなく当然に分かることだが、男性はなぜか日直もやるのだから、日直しかやらない女性に当直業務が回ってくるのはめったにないことになる。私がいたある庁では、男性である私は2週間に1回くらいのペースで当直(日直または宿直)が回ってきていたように記憶している。
看護師や警察官は、女性も当然に夜勤をしている。そのため、夜間に女性を働かせず、男性のみを働かせるとする裁判所の命令に合理性は一切なく、憲法が定める法の下の平等に反することは誰の目にも明らかである。
さらに、問題は「男性のみ夜に働かせる」ことだけではない。裁判所の夜の当直は、「宿直」であって、「夜勤」ではない。
宿直の前後の流れを見てみよう。
①日中の通常勤務→②宿直→③日中の通常勤務
お分かりだろうか。宿直の前後も、通常勤務なのである。つまり、場合によっては、30時間以上連勤することもあるのである。これを、男性のみがずっと強制され続けてきたのである。
なお、運よく夜間に令状請求が来なければ、見回りを終えたら寝ているだけでいいが、その場合でも、私は宿直室で「熟睡」した経験はない。いつ令状請求が来るか、という緊張感の中、職場で寝るわけだから。
裁判所の仕事というのは、絶対にミスが許されない仕事である。謝って済む仕事ではないのである。判決や略式命令にミスがあった場合、控訴してもらったり正式裁判請求をしてもらうなどして、関係者にもう一度法廷に来てもらって、わざわざ手続をやり直して手間と時間をかけさせることになることもある。刑事事件のミスの場合、被疑者や被告人を一旦釈放する手続を執らせることになることもある。
それにも関わらず、男性だけが、頻繁に、30時間以上連勤しながら仕事を続けなければならなかったりするのである。上司が男性であれば、上の③の状態で仕事をすることの危険性を身をもって分かっているから、「後はやっておくから今日は有給を取って帰りな」と気を遣ってくれることもあるが、上司が女性だと地獄である。宿直明けの脳の状態を何も分かっていないから、むしろ仕事を回してこようとする者さえいた。だが別にその女性管理職を責めるつもりはない。ヒラの男性職員が当たり前にやっている業務を、女性の場合は管理職にさえさせていない、裁判所の問題なのである。せめて女性の管理職には、宿直をさせて「実務経験」を積ませるべきだと私は15年くらい前から思っていた。裁判所はとにかく男性を軽視し、女性を特権階級として扱っていたと非難されても仕方がないだろう。
ある庁で私は、通常業務と当直(日直と宿直)を合わせて100時間くらい残業させられていた。
上司から言われた言葉は
「残業するな」「休日に(通常の)仕事をしに来るな」
時短勤務の女性職員から言われた言葉は
「早く慣れるといいですね」
この上司や女性職員についても、別に個人を責めるつもりはない。上司にしても、そう言うしかないのだ。その上司が人を増やしたり、私の当直を免除したりする権限があるわけではないのだし、さらに上から指摘されたことを私に伝えるしかないのだから。
女性職員についても、宿直を経験したことがないのだし、通常業務も軽くなるように配慮されているのだから、私がどれだけ過重な負担を裁判所に強いられてるか、よく分かっていないだけであって、悪意はないのだ。
私は生きるために裁判所を辞めたが、すぐに潰瘍性大腸炎と直腸神経内分泌腫瘍を発症し、直腸を切除して排便障害者となり、今もなお地獄の人生を送っている。立証が困難なので裁判所(国)に対して裁判を起こすことはしていないが、裁判所での地獄の毎日が原因であることは間違いないと個人的には確信している。
